社会人を経験してから大学院に入る (5) 先立つもの
現役か社会人かに関わらず、勉強するには先立つものが必要だ。
大学院や研究活動で必要となるお金について考えてみたい。
2024年現在、国立大学の大学院に進学した場合、年間授業料として53万5800円かかる(法科大学院を除く)。
さらに、入学料が28万2000円かかり、1年目は学費として合計81万7800円が必要になる。
修士課程2年間では約135万円くらい、博士課程3年間では約187万円(入学金含んだ場合)くらいかかる。
国立でも決して安くはない。
大学によっては、入学後に本人からの申請に基づき、経済状況と学業成績を考慮して、入学金や授業料の免除・減免・徴収猶予してもらえることがある。経済的に不安がある人は入学が決まったら大学が提供している制度を調べて、ぜひ応募を検討してみてほしい。
また、日本学生支援機構で貸与を受けることもできる。審査はあるが、日本学生支援機構からの第1種奨学金(無利子)を受けることができた場合、条件に見合えば返済全額免除・半額免除を受けることができる(e.g., 半額免除: 200万円給付 -> 100万円返済免除)。
ただ、勉強や研究活動というのは学費や生活費などの目に見える部分以外にも何かと物入りだ。特に人文系は、研究室で経済的な支援をしてもらえないことが多く、個人レベルでなんとかする必要がある。
「何かと物入りな例」をまとめてみた。
◇ 研究分野の学会年会費 ーーー 年5000円 x 2 = 10,000円
学生料金で3,000円〜8,000円が相場だが、大体2〜3件所属する。
学会の会員でないと発表や論文投稿ができない場合があるので必要不可欠な出費だ。
◇ 教科書や図書館にない書籍を購入する際の書籍代 ーーー 年20,000円くらい?
書籍はできる限り図書館で借りるとしても、時々、購入する必要がある。
組合員割引が使える生協やe-honなどで購入する。
(洋書を購入する場合は、Amazonの中古で買った方が安いこともある)
ご参考までに、私の大学院の場合は入学すると、学内の生協で使えるコピーカードというのがもらえたし、専攻専用の学習室みたいなのがあり、自由に使えるコピー機が置いてあったのである程度のコピー代が助かった。
最近は紙ではない資料共有方法はたくさんあり便利だ。
ただ、DropBoxなどのCloud storageにも容量や機能次第ではお金がかかる。
◇ 国内外の学会に参加するための参加費・交通費・宿泊費 ーーー 年 5万円〜40万円
学会での発表は業績になるので積極的に行いたいが、学会貧乏になる(学会にたくさん参加することでお金がなくなる)こともある。
入学してすぐは不要だが、論文執筆にも何かとお金がかかる。
◇ 調査の際の協力者への謝金・交通費
◇ 研究活動等で必要な機材等(スキャナー・PC・生成AIサブスク等)
◇ 論文を英語で書いた場合の校正費
◇ 博士論文の製本・装丁費・校正費
博士論文を母語ではない言語(英語)で執筆した場合、校正でものすごいお金がかかる。私は任期付きでも職があって研究費があったからなんとか払えたものの、純粋に学生だったら…と思うと背筋が寒くなる…。
人文系の学生はこれらのやりくりを自分でなんとかしなければならないが、もちろん、全て自腹で支払わなければならないということでもない。
多くの大学では、博士課程大学院生に助成金や研究費など(形式や名称はさまざま)を提供している。研究費として年間で30万円くらいもらえる場合もあれば、月10万円くらいの奨学金をもらえることもある。ただし、研究費には使途に制約があったり、奨学金には、学内外でのアルバイト時間や副収入に制約や上限が設けられることもあるので、事前によく確認したい。
そのほか、大学ではTA・RAなどの就業(アルバイト)機会も提供されている。時給は決して高くはないが、キャンパス内で授業の隙間時間を利用してアルバイトができるのが利点だ。
もっと公的なものとしては、日本学術振興会の特別研究員になると給与や研究費をもらうことができる。
学内外の助成金や奨学金の多くは競争型なので簡単ではないかもしれないが、もし助成金がもらえなかったら本当に自腹になってしまうので、ぜひ応募を検討したい。
入学前の段階でこうした研究活動に付随した経費まで準備する必要はないが、目に見えた金額以外にも、一時的な立替であったとしても、出費する可能性があることは心づもりしていても良いだろう。また、助成金や奨学金があることを知っているだけでも気持ちが楽になるかもしれない。
そしてこの「物入り」問題は大学院生の時だけでなく、大学等で職を得た研究者になってもずっと、ずーと付きまとってくる。
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